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平成16(行ヒ)4 審決取消請求事件
平成17年07月14日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄自判 東京高等裁判所
判決文全文→http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120821953186.pdf

結論

拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,もとの商標登録出願について願書から指定商品等を削除する補正がされたときには,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,審決が結果的に指定商品等に関する判断を誤ったことにはならないものというべきである。

理由

  1. 10条は,もとの出願について何ら規定していないこと,商標法施行規則22条4項は,10条1項の規定により新たな出願をする場合,新たな出願と同時に,もとの出願の願書を補正しなければならない旨を規定していることからすると,もとの出願については,その願書を補正することによって,新たな出願がされた指定商品等が削除される効果が生ずると解する。
  2. 拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合,10条1項の規定に基づいて新たな出願がされ,もとの出願について補正がされたときには,68条の40第1項の補正ではないから,その効果が出願時に遡って生ずることはなく,そのほかに補正の効果が出願時にさかのぼって生ずる旨の規定はない。
  3. 補正の効果が出願時にさかのぼって生ずるとすると,商標法68条の40第1項が補正ができる時期を制限している趣旨に反することになる。
  4. 出願人は,審決において拒絶理由があるとされた指定商品等以外の指定商品等について,10条1項の新たな出願をすれば,その出願は,もとの出願時にしたものとみなされることになり,出願した指定商品等の一部について拒絶理由があるために全体が拒絶されるという不利益を免れることができる。したがって,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合,10条1項の新たな出願がされ,もとの出願について願書から指定商品等を削除する補正がされたときに,その補正の効果が出願時に遡って生ずることを認めなくとも,出願人の利益が害されることはなく,10条の趣旨に反しない。

出題年度

科目 出題年度
短答試験
論文試験 平成16年
口述試験

解説

弁理士試験では、上記理由について暗記しなければならない。また、事例問題では取り得る措置として、出題される可能性がある。

判決文

         主    文
原判決を破棄する。
被上告人の請求を棄却する。
訴訟の総費用は被上告人の負担とする。
理    由
上告代理人都築弘ほかの上告受理申立て理由について
1 原審が適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 被上告人は,平成12年2月9日,別紙記載アの商標(以下「本願商標」と
いう。)につき,商標法施行令(平成13年政令第265号による改正前のもの)
別表第1の第35類,第37類,第38類及び第42類のそれぞれについて別紙記
載イの役務を指定役務として,商標登録出願(以下「本件出願」という。)をした
(以下,本件出願の第35類の役務群を「甲役務群」,第37類の役務群を「乙役
務群」,第38類の役務群を「丙役務群」,第42類の役務群を「丁役務群」とい
う。)。
(2) 特許庁は,本件出願について,平成13年3月5日付けで,拒絶理由を通
知した。被上告人は,同年4月18日付け手続補正書によって,甲役務群を指定役
務から削除する補正をしたが,特許庁は,同年6月1日,拒絶査定をした。
被上告人は,同月27日,拒絶査定に対する審判の請求をしたところ,特許庁は
,平成15年1月21日,請求は成り立たないとの審決(以下「本件審決」という。)
をした。その理由は,本願商標は,先願に係る他人の登録商標と類似しており,指
定役務も同一又は類似であるから,商標法4条1項11号に該当するというもので
あった。
(3) 被上告人は,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起し,本件訴訟提起
– 1 –
後である平成15年3月11日に,商標法10条1項の規定に基づいて,本件出願
の指定役務の一部である丁役務群を指定役務とする新たな商標登録出願(分割出願)
を行い,本件出願の指定役務を乙役務群と丙役務群に減縮することを内容とする手
続補正書を提出した。
さらに,被上告人は,同年6月2日,商標法10条1項の規定に基づいて,本件
出願の指定役務の一部である乙役務群(「建築一式工事」を除く。)及び丙役務群
を指定役務とする新たな商標登録出願(分割出願)を行い,本件出願の指定役務を
「建築一式工事」に減縮することを内容とする手続補正書を提出した。
被上告人は,本件出願は,本件訴訟提起後,上記分割出願に伴う補正によって,指
定役務が減縮されたから,本件審決は,指定役務を誤った結果類似性の判断を誤っ
たものであると主張している。
2 原審は,次のとおり判断して,被上告人の請求を認容した。
(1)
商標法10条1項の定める要件を充足している限り,分割出願がされることによっ
て,原出願の指定商品及び指定役務(以下「指定商品等」という。)は,原出願と
分割出願のそれぞれの指定商品等に当然に分割される。それゆえ,原出願の指定商
品等について,分割出願の指定商品等として移行する商品等が削除されることは,
分割出願自体に含まれ,別個の手続行為を要しない。
出願に係る商標の指定商品等が分割出願によって減少したことは,審決取消訴訟
の審理及び裁判の対象がその限りで当然に減少したことに帰するから,審決取消訴
訟では,残存する指定商品等について,審決時を基準にして,審理及び裁判をすべ
きことになる。
– 2 –
(2) 本件出願の指定役務は,本件訴訟提起後に2回にわたって行われた分割出願
の結果,「建築一式工事」となっており,そうであるとすると,本願商標と先願に
係る他人の登録商標とは,指定役務が同一又は類似であるとはいえないから,本願
商標について商標法4条1項11号に該当するとした本件審決の判断は,結果とし
て誤りであり,本件審決のうち「建築一式工事」を指定役務とする部分は,違法と
して取り消されるべきである。本件審決のその余の部分は,上記2回の分割出願に
よって,その効力を失っている。
3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次の
とおりである。
商標法10条1項は,「商標登録出願人は,商標登録出願が審査,審判若しくは
再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対す
る訴えが裁判所に係属している場合に限り,2以上の商品又は役務を指定商品又は
指定役務とする商標登録出願の一部を1又は2以上の新たな商標登録出願とするこ
とができる。」と規定し,同条2項は,「前項の場合は,新たな商標登録出願は,
もとの商標登録出願の時にしたものとみなす。」と規定している。また,商標法施
行規則22条4項は,特許法施行規則30条の規定を商標登録出願に準用し,商標
法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合において,もと
の商標登録出願の願書を補正する必要があるときは,その補正は,新たな商標登録
出願と同時にしなければならない旨を規定している。
以上のとおり,商標法10条は,「商標登録出願の分割」について,新たな商標
登録出願をすることができることやその商標登録出願がもとの商標登録出願の時に
したものとみなされることを規定しているが,新たな商標登録出願がされた後にお
けるもとの商標登録出願については何ら規定していないこと,商標法施行規則22
– 3 –
条4項は,商標法10条1項の規定により新たな商標登録出願をしようとする場合
においては,新たな商標登録出願と同時に,もとの商標登録出願の願書を補正しな
ければならない旨を規定していることからすると,もとの商標登録出願については
,その願書を補正することによって,新たな商標登録出願がされた指定商品等が削
除される効果が生ずると解するのが相当である。
商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決(以下「拒絶審決」という。)に
対する訴えが裁判所に係属している場合に,商標法10条1項の規定に基づいて新
たな商標登録出願がされ,もとの商標登録出願について補正がされたときには,そ
の補正は,商標法68条の40第1項が規定する補正ではないから,同項によって
その効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,商標法には,その
ほかに補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずる旨の規定はない。そし
て,拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合にも,補正の効果が商標登
録出願の時にさかのぼって生ずるとすると,商標法68条の40第1項が,事件が
審査,登録異議の申立てについての審理,審判又は再審に係属している場合以外に
は補正を認めず,補正ができる時期を制限している趣旨に反することになる(最高
裁昭和56年(行ツ)第99号同59年10月23日第三小法廷判決・民集38巻
10号1145頁参照)。
拒絶審決を受けた商標登録出願人は,審決において拒絶理由があるとされた指定
商品等以外の指定商品等について,商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標
登録出願をすれば,その商標登録出願は,もとの商標登録出願の時にしたものとみ
なされることになり,出願した指定商品等の一部について拒絶理由があるために全
体が拒絶されるという不利益を免れることができる。したがって,拒絶審決に対す
る訴えが裁判所に係属している場合に,商標法10条1項の規定に基づいて新たな
商標登録出願がされ,もとの商標登録出願について願書から指定商品等を削除する
– 4 –
補正がされたときに,その補正の効果が商標登録出願の時にさかのぼって生ずるこ
とを認めなくとも,商標登録出願人の利益が害されることはなく,商標法10条の
規定の趣旨に反することはない。
以上によれば,【要旨】拒絶審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に,
商標法10条1項の規定に基づいて新たな商標登録出願がされ,もとの商標登録出
願について願書から指定商品等を削除する補正がされたときには,その補正の効果
が商標登録出願の時にさかのぼって生ずることはなく,審決が結果的に指定商品等
に関する判断を誤ったことにはならないものというべきである。これと異なる原審
の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由が
ある。
4 そうすると,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人の請求は理由がな
いから,被上告人の請求を棄却することとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 泉 徳治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 島
田仁郎 裁判官 才口千晴)
別紙
ア 商標 eAccess [編注:「eAccess」は原本では商標登録出願した際の商
標で表記されている。]
イ 指定役務
第35類 市場調査,商品の販売に関する情報の提供
第37類 建築一式工事,機械器具設置工事,電気工事,電気通信工事,電気通
信機械器具の修理又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラ
ムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保
– 5 –
守,配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守
第38類 移動体電話による通信,テレックスによる通信,計算機端末による通
信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テ
レビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,インターネット接続代行,
電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与
第42類 建築物の設計,電気通信設備の開発,電気通信事業に関する企画・調
査・研究及びコンサルティング,有線テレビジョン放送事業及び有線放送事業に関
する企画・調査・研究及びコンサルティング,電気通信に関する機器・ソフトウェ
アの開発,有線テレビジョン放送に関する機器の開発,計算機等を用いて行なう情
報処理
– 6 –

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