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クロム酸鉛顔料事件(クロム酸鉛顔料およびその製法事件)

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平成7(行ツ)105 審決取消請求事件
平成12年01月27日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所
判決文全文→http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120949755904.pdf

結論

無効審判請求(A)がされた後に、これと同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求(B)が成り立たない旨の確定審決の登録がされたとしても、無効審判請求(A)が不適法となるものではないと解する。

理由

  1. 同一の特許に対して複数の者が無効審判請求をすることは禁止されておらず、特許を無効とすることについて利益を有する者は、いつでも当該特許に対して無効審判請求をすることができるのであり、この特許を無効とすることについての利益は、無効審判請求をする者がそれぞれ有する固有の利益である。しかし、ある特許の無効審判請求につき請求不成立審決が確定し、その登録がされた場合において、更に同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求の繰返しを許容することは、特許権の安定を損ない、発明の保護、利用という特許法の目的にも反することになる。そこで、特許法167条は、無効審判請求をする者の固有の利益と特許権の安定という利益との調整を図るため、同条所定の場合に限って利害関係人の無効審判請求をする権利を制限したものであるから、この規定が適用される場合を拡張して解釈すべきではなく、文理に則して解釈することが相当である。
  2. 仮に、確定した請求不成立審決の登録により、既に係属している同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求が不適法になると解するならば、複数の無効審判請求事件が係属している場合において、一部の請求人が請求不成立審決に対する不服申立てをしなかったときは、これにより、他の請求人が自己の固有の利益のため追行してきたそれまでの手続を無に帰せしめ、その利益を失わせることとなり、不合理といわざるを得ない。
  3. 以上のように解するときは、同一特許に対し同一の事実及び同一の証拠に基づいて並行して複数の無効審判請求がされ、特許庁の判断が請求不成立審決と特許を無効にすべき旨の審決(以下「無効審決」という。)とに分かれ、双方が確定する事態が生じ得ることになる。しかし、無効審決が確定したときは、特許権は、初めから存在しなかったものとみなされるのであるから(特許法一二五条)、これとは別に既に請求不成立審決が確定していたとしても、当該特許の効力は失われるのであって、審決の矛盾、抵触により法的状態に混乱を生ずることはない。このことは、事実又は証拠を異にする無効審判請求について請求不成立審決と無効審決がそれぞれ確定した場合と同様である。また、同一特許に対する同一の事実及び同一の証拠に基づく複数の無効審判請求につき、いずれについても請求不成立審決がされ、一部の者との関係では確定し、その余の者が右審決に対する取消訴訟を提起し請求認容判決及び無効審決を得た場合もこれと同様に解することができる。

出題年度

 

解説

平成23年改正により、上記判例が適用されるか否か議論があるので、注意する必要がある。

判決文

         主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理    由
上告代理人染野義信、同染野啓子の上告理由第一点について
一 本件訴訟に至る経緯は、次のとおりである。
被上告人ら及び訴外D工業株式会社(以下「訴外会社」という。)は、上告人が
有した特許第九五二〇六五号「クロム酸鉛顔料およびその製法」の特許権について、
それぞれ特許を無効とする審判を請求し、併合されたその審理において、無効理由
として同一の事実を主張し、同一の証拠を提出した。右各審判の請求は成り立たな
い旨の審決がされたので、被上告人らは、審決の取消しを求める本件訴訟を提起し
たが、訴外会社は、審決の取消しを求める訴訟を提起せず、同社との関係では審決
が確定した。
二 特許法一六七条は、特許を無効とする審判の請求(以下「無効審判請求」と
いう。)について確定審決の登録があったときは、同一の事実及び同一の証拠に基
づいて無効審判請求をすることはできないと規定するところ、その趣旨は、ある特
許につき無効審判請求が成り立たない旨の審決(以下「請求不成立審決」という。)
が確定し、その旨の登録がされたときは、その登録の後に新たに右無効審判請求に
おけるのと同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求をすることが許されな
いとするものであり、それを超えて、確定した請求不成立審決の登録により、その
時点において既に係属している無効審判請求が不適法となるものと解すべきではな
い。したがって、【要旨】甲無効審判請求がされた後にこれと同一の事実及び同一
の証拠に基づく乙無効審判請求が成り立たない旨の確定審決の登録がされたとして
も、甲無効審判請求が不適法となるものではないと解するのが相当である。その理
– 1 –
由は、次のとおりである。
同一の特許に対して複数の者が無効審判請求をすることは禁止されておらず、特
許を無効とすることについて利益を有する者は、いつでも当該特許に対して無効審
判請求をすることができるのであり、この特許を無効とすることについての利益は、
無効審判請求をする者がそれぞれ有する固有の利益である。しかし、ある特許の無
効審判請求につき請求不成立審決が確定し、その登録がされた場合において、更に
同一の事実及び同一の証拠に基づく無効審判請求の繰返しを許容することは、特許
権の安定を損ない、発明の保護、利用という特許法の目的にも反することになる。
そこで、特許法一六七条は、無効審判請求をする者の固有の利益と特許権の安定と
いう利益との調整を図るため、同条所定の場合に限って利害関係人の無効審判請求
をする権利を制限したものであるから、この規定が適用される場合を拡張して解釈
すべきではなく、文理に則して解釈することが相当である。
仮に、確定した請求不成立審決の登録により、既に係属している同一の事実及び
同一の証拠に基づく無効審判請求が不適法になると解するならば、複数の無効審判
請求事件が係属している場合において、一部の請求人が請求不成立審決に対する不
服申立てをしなかったときは、これにより、他の請求人が自己の固有の利益のため
追行してきたそれまでの手続を無に帰せしめ、その利益を失わせることとなり、不
合理といわざるを得ない。
以上のように解するときは、同一特許に対し同一の事実及び同一の証拠に基づい
て並行して複数の無効審判請求がされ、特許庁の判断が請求不成立審決と特許を無
効にすべき旨の審決(以下「無効審決」という。)とに分かれ、双方が確定する事
態が生じ得ることになる。しかし、無効審決が確定したときは、特許権は、初めか
ら存在しなかったものとみなされるのであるから(特許法一二五条)、これとは別
に既に請求不成立審決が確定していたとしても、当該特許の効力は失われるのであ
– 2 –
って、審決の矛盾、抵触により法的状態に混乱を生ずることはない。このことは、
事実又は証拠を異にする無効審判請求について請求不成立審決と無効審決がそれぞ
れ確定した場合と同様である。また、同一特許に対する同一の事実及び同一の証拠
に基づく複数の無効審判請求につき、いずれについても請求不成立審決がされ、一
部の者との関係では確定し、その余の者が右審決に対する取消訴訟を提起し請求認
容判決及び無効審決を得た場合もこれと同様に解することができる。
この見解に反する大審院の判例(大審院大正八年(オ)第八一一号同九年三月一
九日判決・民録二六輯三七一頁)は、これを変更すべきである。
三 そうすると、被上告人らの無効審判請求がされた時点で、その請求と同一の
事実及び同一の証拠に基づく訴外会社の無効審判請求について確定審決の登録がさ
れていない本件において、被上告人らの本件無効審判請求が適法であるとする原審
の判断は、結論において是認することができる。論旨は採用することができない。
上告代理人染野義信、同染野啓子のその余の上告理由及び上告代理人花岡巖、同
新保克芳、同小田島平吉、同江角洋治、同小田嶋平吾の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、結論にお
いて是認することができる。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の
認定を非難し、独自の見解に立って原判決を論難するか、又は原判決の結論に影響
を及ぼさない事項についての違法をいうものであって、採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤井正雄 裁判官 小野幹雄 裁判官 遠藤光男 裁判官 井嶋
一友 裁判官 大出峻郎)
– 3 –

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