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メリヤス編機事件

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昭和42(行ツ)28 審決取消請求  昭和51年03月10日
最高裁判所大法廷 判決 その他 東京高等裁判
判決文全文 →http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121345773327.pdf

結論

  • 審決取消訴訟の審理範囲は、①専ら審判手続において現実に争われ、かつ、
  • ②審理判断された特定の無効原因(無効理由・拒絶理由)に関するもののみが、
  • 審理の対象とされると解する。

理由

なし

出題年度

科目 出題年度
短答試験
論文試験 【平成23年】【平成24年】
口述試験

解説

  • 判上記結論は暗記すべきである。本判決は弁理士試験では超重要判例である。
  • 本判決は、「無効審判」のみならず、「拒絶査定不服審判」でも適用がある。例えば、平成24年論文試験では無効審判、平成25年度論文試験では拒絶査定不服審判について問われている。
  • 次に、本判例の「理由付け」をどうするかという点で問題となっている。弁理士試験では、論文を書くときに、「結論(判旨)」+「理由」+「あてはめ」という流れで書くことが多い。予備校の模範答練でもこのようになっている。
  • ところが、判決文に理由が書いているときは、その理由を論文の答案に書けば良いのだが、本判例は判決文中に理由が書いていない。このため、基本書等から理由付けをもってくる必要がある。
  • 予備校の答練などで出題されていると思うので、予備校の書いた理由付けをそのまま暗記してしまえば、楽なのだが、その理由付けも本試験で必ずしも正解になるとは限らない。
  • そこで、現在最も有力と言われている特許判例百選の大渕氏の理由付けがおすすめである。
  • 判例百選のような本は試験委員の人は必ず目を通すし、大渕氏のような大物の書いた理由付けは少なくとも正解の一つに入れられているだろうと推測する。(筋が通っていればなにを記載しても正解になるという予備校講師もいるようだが、試験委員の誰しも知っている書籍に記載され、大物が書いている理由のほうが、正解になる確率が高い。)
  • その「特許判例百選第4版(有斐閣、東京大学教授大渕哲也氏)」の理由は次のとおりである。
  • →「訴訟の前段階において、専門行政庁による慎重な審理判断を受ける利益を害しないため。
  • 短くて覚えやすいし、弁理士試験受験生はこちらの理由付けを暗記されることをおすすめする。
  • ただ、予備校の答練で書くと、模範答案の解答と相違することを理由に不正解とされてしまうことがる。予備校のアルバイト採点官は採点表に掲載されている理由と一致するか否かで判断しているからだ。

判決文全文

         主    文
本件上告理由第五点の論旨は理由がない。
理    由
上告代理人新長巖の上告理由第五点について
所論は、要するに、上告人らが特許庁及び原審において主張した事実について、
特許庁における判断を経ていないという理由で判断しなかつた原判決には、法律の
適用を誤り、最高裁判所 判例(同庁昭和二六年(オ)第七四五号同二八年一〇月
一六日第二小法廷判決・裁判集民事一〇号一八九頁)に違反した違法があるという
のである。
本件に適用される旧特許法(大正一〇年法律第九六号。以下「法」という。)に
よれば、特許にこれを無効とすべき原因があるとする利害関係人は、特許の無効の
審判を請求することができ(八四条)、右審判の審決又は特許出願に対する査定に
対しては、これを受けた者から抗告審判の請求をすることができる(一〇九条)と
されるとともに、他方、審判又は抗告審判を請求することができる事項に関する訴
は、抗告審判の審決に対する訴としてのみ提起することができ(一二八条ノ二第四
項)、かつ、抗告審判の審決に対する訴は、東京高等裁判所の専属管轄とされてい
る(同条一項)。そして、更に、右訴において請求が理由があると認められるとき
は、裁判所は、審決を取り消すべく、右取消があつた場合には、抗告審判の審判官
は、更に審理を行つて審決をすべきものとされている(一二八条ノ五)。これによ
つてみると、法は、特許出願に関する行政処分、すなわち特許又は拒絶査定の処分
が誤つてされた場合におけるその是正手続については、一般の行政処分の場合とは
異なり、常に専門的知識経験を有する審判官による審判及び抗告審判(査定につい
ては抗告審判のみ)の手続の経由を要求するとともに、取消の訴は、原処分である
特許又は拒絶査定の処分に対してではなく、抗告審判の審決に対してのみこれを認
め、右訴訟においては、専ら右審決の適法違法のみを争わせ、特許又は拒絶査定の
適否は、抗告審判の審決の適否を通じてのみ間接にこれを争わせるにとどめている
ことが知られるのである。
次に、法が審判及び抗告審判の手続として定めているところをみると、特許の無
効審判の請求については、一定の申立及び理由を記載した審判請求書を提出すべく
(八六条)、提出された請求書についてはその副本を被請求人に送達して答弁書提
出の機会を与えるものとし(八八条一項)、また、審判においては、申し立てられ
た理由以外の理由についても審理することができるが、この場合には、その理由に
つき当事者らに対して意見申立の機会を与えなければならないとする(一〇三条)
とともに、審判に関与する審判官についての除斥、忌避(九一条から九六条まで)、
公開による口頭審理方式(九七条)、利害関係人の参加(九八、九九条)、証拠調
(一〇〇条)等、民事訴訟に類似した手続を定め、抗告審判についてもこれらの規
定を準用している(一一〇条)。これによつてみると、法は、特許無効の審判につ
いていえば、そこで争われる特許無効の原因が特定されて当事者らに明確にされる
ことを要求し、審判手続においては、右の特定された無効原因をめぐつて攻防が行
われ、かつ、審判官による審理判断もこの争点に限定してされるという手続構造を
採用していることが明らかであり、法一一七条が「特許若ハ第五十三条ノ許可ノ効
力……ニ関スル確定審決ノ登録アリタルトキハ何人ト雖同一事実及同一証拠ニ基キ
同一審判ヲ請求スルコトヲ得ス」と規定しているのも、このような手続構造に照応
して、確定審決に対し、そこにおいて現実に判断された事項につき対世的な一事不
再理の効果を付与したものと考えられる。そしてまた、法が、抗告審判の審決に対
する取消訴訟を東京高等裁判所の専属管轄とし、事実審を一審級省略しているのも、
当該無効原因の存否については、すでに、審判及び抗告審判手続において、当事者
らの関与の下に十分な審理がされていると考えたためにほかならないと解されるの
である。
右に述べたような、法が定めた特許に関する処分に対する不服制度及び審判手続
の構造と性格に照らすときは、特許無効の抗告審判の審決に対する取消の訴におい
てその判断の違法が争われる場合には、専ら当該審判手続において現実に争われ、
かつ、審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされるべき
ものであり、それ以外の無効原因については、右訴訟においてこれを審決の違法事
由として主張し、裁判所の判断を求めることを許さないとするのが法の趣旨である
と解すべきである。
そこで、進んで右にいう無効原因の特定について考えるのに、法五七条一項各号
は、特許の無効原因を抽象的に列記しているが、そこに掲げられている各事由は、
いずれも特許の無効原因をなすものとしてその性質及び内容を異にするものである
から、そのそれぞれが別個独立の無効原因となるべきものと解するのが相当である
し、更にまた、同条同項一号の場合についても、そこに掲げられている各規定違反
は、それぞれその性質及び内容を異にするから、これまた各規定違反ごとに無効原
因が異なると解すべきである。しかしながら、無効原因を単に右のような該当条項
ないしは違反規定のみによつて抽象的に特定することで足りるかどうかは、特許制
度に関する法の仕組みの全体に照らし、特に法一一七条が、前記のように、確定審
決における一事不再理の効果の及ぶ範囲を同一の事実及び証拠によつて限定すべき
ものとしていることとの関連を考慮して、慎重に決定されなければならない。
思うに、特許の基本的要件は、法一条に定める「新規ナル工業的発明」に該当す
ることであり、特許すべきかどうか、又は特許が無効かどうかについて最も多く問
題になるのも、右法条に適合するかどうか、なかんずく当該発明が「新規ナル」も
のであるかどうかであるところ、法四条は、右にいう発明の「新規」とは、「特許
出願前国内ニ於テ公然知ラレ又ハ公然用ヰラレタルモノ」又は「特許出願前国内ニ
頒布セラレタル刊行物ニ容易ニ実施スルコトヲ得ヘキ程度ニ於テ記載セラレタルモ
ノ」に該当しないことをいうと規定している。すなわち、ある発明が法にいう「新
規ナル」もの(以下「新規性」という。)に当たるかどうかは、常に、その当時に
おける「公然知ラレ又ハ公然用ヰラレタルモノ」又は公知刊行物に記載されたもの
(以下「公知事実」という。)との対比においてこれを検討、判断すべきものとさ
れているのである。ところが、このような公知事実は、広範多岐にわたつて存在し、
問題の発明との関連において対比されるべき公知事実をもれなく探知することは極
めて困難であるのみならず、このような関連性を有する公知事実が存する場合にお
いても、そこに示されている技術内容は種々様々であるから、新規性の有無も、こ
れらの公知事実ごとに、各別に問題の発明と対比して検討し、逐一判断を施さなけ
ればならないのである。法が前述のような独得の構造を有する審査、無効審判及び
抗告審判の制度と手続を定めたのは、発明の新規性の判断のもつ右のような困難と
特殊性の考慮に基づくものと考えられるのであり、前記法一一七条の規定も、発明
の新規性の有無が証拠として引用された特定の公知事実に示される具体的な技術内
容との対比において個別的に判断されざるをえないことの反映として、その趣旨を
理解することができるのである。そうであるとすれば、無効審判における判断の対
象となるべき無効原因もまた、具体的に特定されたそれであることを要し、たとえ
同じく発明の新規性に関するものであつても、例えば、特定の公知事実との対比に
おける無効の主張と、他の公知事実との対比における無効の主張とは、それぞれ別
個の理由をなすものと解さなければならない。
以上の次第であるから、審決の取消訴訟においては、抗告審判の手続において審
理判断されなかつた公知事実との対比における無効原因は、審決を違法とし、又は
これを適法とする理由として主張することができないものといわなければならない。
この見解に反する当裁判所の従前の判例(最高裁昭和三三年(オ)第五六七号同三
五年一二月二〇日第三小法廷判決・民集一四巻一四号三一〇三頁、同昭和三九年(
行ツ)第六二号同四三年四月四日第一小法廷判決・民集二二巻四号八一六頁)は、
これを変更すべきものである。(なお、拒絶査定の理由の特定についても無効原因
の特定と同様であり(拒絶理由の通知について法七二条、抗告審判におけるその準
用について法一一三条一項参照)、したがつて、拒絶査定に対する抗告審判の審決
に対する取消訴訟についても、右審決において判断されなかつた特定の具体的な拒
絶理由は、これを訴訟において主張することができないと解すべきである。それ故、
上告人の引用する当裁判所昭和二六年(オ)第七四五号同二八年一〇月一六日第二
小法廷判決・裁判集民事一〇号一八九頁もまた、これを変更すべきである。)
以上の見解に立つて本件をみると、上告人が本上告理由において原審がこれにつ
き審理判断しなかつた違法があると主張する諸事実のあるものは、本件審決が審理
判断した無効原因条項とは別個の条項に関するものであり、またその他はいずれも、
法一条違反に関するものではあるが、本件審決が無効原因として認めた公知事実と
は別個の公知事実の主張であるから、原審が、本件審決の適否につき、そこで審理
判断されていない別個の無効原因であるこれらの事実の主張を考慮すべきでないと
したのは正当であり、原判決には所論の違法はなく、論旨は採用することができな
い。
よつて、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
最高裁判所大法廷
裁判長裁判官    村   上   朝   一
裁判官    藤   林   益   三
裁判官    岡   原   昌   男
裁判官    下   田   武   三
裁判官    岸       盛   一
裁判官    天   野   武   一
裁判官    坂   本   吉   勝
裁判官    岸   上   康   夫
裁判官    江 里 口   清   雄
裁判官    大   塚   喜 一 郎
裁判官    高   辻   正   己
裁判官    吉   田       豊
裁判官    団   藤   重   光
裁判官    本   林       讓
裁判官    服   部   高   顯

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