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生理活性物質測定法事件(カリクレイン事件)1

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平成10(オ)604 特許権侵害予防請求事件
平成11年07月16日 最高裁判所第二小法廷 判決 破棄自判 大阪高等裁判所
判決文全文→http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120609654909.pdf

結論

方法の発明と物を生産する方法の発明とは、明文上判然と区別され、与えられる特許権の効力も明確に異なっているのであるから、方法の発明と物を生産する方法の発明とを同視することはできないし、方法の発明に関する特許権に物を生産する方法の発明に関する特許権と同様の効力を認めることもできない。そして、当該発明がいずれの発明に該当するかは、まず、願書に添付した特許請求の範囲の記載に基づいて判定すべきものである(70条1項)。

理由

なし

出題年度

24年

解説

上記文言を暗記する必要はないが、できれば判決文の文言を使って記載したい。時間がないときは、条文から明確なので、論文試験では条文の根拠だけを記載すれば良い。

判決文

         主    文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。
理    由
上告代理人上坂明、同北本修二、上告補佐人伊藤武雄の上告理由第一点ないし第
四点について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当とし
て是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属す
る証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。
同第五点及び第六点について
一 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
1 被上告人は、発明の名称を「生理活性物質測定法」とする特許権(特許番号
第一七二五七四七号。以下「本件特許権」という。)を有している。
2 本件特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の
特許請求の範囲第1項の記載は、「動物血漿、血液凝固第ⅩⅡ因子活性化剤、電解
質、被検物質、から成る溶液を混合反応させ、次いで該反応におけるカリクレイン
の生成を停止させるために、生成したカリクレイン活性には実質的に無影響で活性
型血液凝固第ⅩⅡ因子活性のみを特異的に阻害する阻害剤をカリクレイン生成と反
応時間の間に実質的に直線的な関係が成立する時間内に加え、生成したカリクレイ
ンを定量することを特徴とする被検物質のカリクレイン生成阻害能測定法。」であ
る(以下、右記載の発明を「本件発明」という。)。
3 上告人は、原判決別紙目録(一)記載の抽出液(以下「上告人抽出液」とい
う。)及びこれを有効成分とする同目録(二)記載の製剤(商品名「ローズモルゲ
– 1 –
ン注」。以下「上告人製剤」という。上告人抽出液及び上告人製剤を併せて、以下
「上告人医薬品」という。)につき薬事法に基づく製造承認を受け、上告人医薬品
を製造販売している。また、上告人製剤については健康保険法に基づく薬価基準へ
の収載が行われている。
4 上告人は、上告人医薬品を製造するに際し、品質規格の検定のために、カリ
クレイン様物質産生阻害活性の確認試験として、原判決別紙目録(三)記載の方法
(以下「本件方法」という。)を使用している。
二 被上告人は、本訴において、上告人が本件方法を使用して上告人医薬品を製
造した上販売することは本件特許権の侵害に当たると主張して、(1) 上告人抽
出液の製造の差止め、上告人製剤の製造販売の差止め及びこれらの宣伝広告の差止
め、 (2) 上告人医薬品の廃棄、(3) 上告人製剤について健康保険法に基
づき収載された薬価基準申請の取下げ、(4) 上告人医薬品について薬事法に基
づき取得した製造承認の申請の取下げ及び右製造承認によって得ている地位の第三
者への承継、譲渡の禁止を求めている。
原審は、(一) 本件方法は、本件発明の技術的範囲に属する、(二) 本件発
明は、概念的には方法の発明であるが、本件方法が上告人医薬品の製造工程に組み
込まれ他の製造作業と不即不離の関係で用いられていることからすれば、実質的に
物を生産する方法の発明と同視することができ、本件特許権は、本件発明を用いて
製造された物の販売についても侵害としてその停止を求め得る効力を有すると判断
した。その上で、被上告人の請求(1)のうち、本件方法を用いた上告人抽出液の
製造の差止め、本件方法を用いた上告人製剤の製造販売及び宣伝広告の差止め、
(2) 上告人医薬品の廃棄、(3) 上告人製剤について健康保険法に基づく薬
価基準収載申請の取下げを求める限度で被上告人の請求を認容し、その余の請求を
棄却した。
– 2 –
三 しかし、原審の判断のうち右(二)は是認することができない。その理由は、
次のとおりである。
1 特許権者は、自己の特許権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、
その侵害の差止めを請求することができるところ(特許法一〇〇条一項)、特許権
者は、業として特許発明の実施をする権利を専有するから(同法六八条本文)、第
三者が業として特許発明を実施することは、特許権の侵害に当たる。そして、特許
発明の実施とは、方法の発明にあっては、その方法を使用する行為をいうから(同
法二条三項二号)、特許権者は、業として特許発明の方法を使用する者に対し、そ
の方法を使用する行為の差止めを請求することができる。これに対し、物を生産す
る方法の発明にあっては、特許発明の実施とは、その方法を使用する行為の外、そ
の方法により生産した物を使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその
譲渡若しくは貸渡しの申出をする行為をいうから(同項三号)、特許権者は、業と
してこれらの行為を行う者に対し、これらの行為の差止めを請求することができる。
2 方法の発明と物を生産する方法の発明とは、明文上判然と区別され、与えら
れる特許権の効力も明確に異なっているのであるから、方法の発明と物を生産する
方法の発明とを同視することはできないし、方法の発明に関する特許権に物を生産
する方法の発明に関する特許権と同様の効力を認めることもできない。そして、当
該発明がいずれの発明に該当するかは、まず、願書に添付した明細書の特許請求の
範囲の記載に基づいて判定すべきものである(同法七〇条一項参照)。
これを本件について見るに、本件明細書の特許請求の範囲第1項には、カリクレ
イン生成阻害能の測定法が記載されているのであるから、本件発明が物を生産する
方法の発明ではなく、方法の発明であることは明らかである。本件方法が上告人医
薬品の製造工程に組み込まれているとしても、本件発明を物を生産する方法の発明
ということはできないし、本件特許権に物を生産する方法の発明と同様の効力を認
– 3 –
める根拠も見いだし難い。
3 【要旨第一】本件方法は本件発明の技術的範囲に属するのであるから、上告
人が上告人医薬品の製造工程において本件方法を使用することは、本件特許権を侵
害する行為に当たる。したがって、被上告人は、上告人に対し、特許法一〇〇条一
項により、本件方法の使用の差止めを請求することができる。しかし、本件発明は
物を生産する方法の発明ではないから、上告人が、上告人医薬品の製造工程におい
て、本件方法を使用して品質規格の検定のための確認試験をしているとしても、そ
の製造及びその後の販売を、本件特許権を侵害する行為に当たるということはでき
ない。したがって、被上告人が、上告人に対し、上告人医薬品の製造等の差止めを
求める前記(1)の請求はすべて認容することができないものである(なお、本件
訴訟の経過に徴すれば、右(1)の請求を、本件方法の使用の差止めを求める趣旨
を含むものと解することもできない。)。
4 特許法一〇〇条二項が、特許権者が差止請求権を行使するに際し請求するこ
とができる侵害の予防に必要な行為として、侵害の行為を組成した物(物を生産す
る方法の特許発明にあっては、侵害の行為により生じた物を含む。)の廃棄と侵害
の行為に供した設備の除却を例示しているところからすれば、【要旨第二】同項に
いう「侵害の予防に必要な行為」とは、特許発明の内容、現に行われ又は将来行わ
れるおそれがある侵害行為の態様及び特許権者が行使する差止請求権の具体的内容
等に照らし、差止請求権の行使を実効あらしめるものであって、かつ、それが差止
請求権の実現のために必要な範囲内のものであることを要するものと解するのが相
当である。
これを本件について見るに、上告人医薬品が、侵害の行為に供した設備に当たら
ないことはもとより、侵害の行為を組成した物に当たるということもできない。ま
た、【要旨第三】本件発明が方法の発明であり、侵害の行為が本件方法の使用行為
– 4 –
であって、侵害差止請求としては本件方法の使用の差止めを請求することができる
にとどまることに照らし、上告人医薬品の廃棄及び上告人製剤についての薬価基準
収載申請の取下げは、差止請求権の実現のために必要な範囲を超えることは明らか
である。したがって、被上告人の上告人に対する前記(2)及び(3)の請求も認
容することができないものである。
四 そうすると、以上と異なる見解に立って、被上告人の前記(1)の請求の一
部及び同(2)(3)の請求を認容した原審の判断には、法令の解釈適用を誤った
違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点
に関する論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして、
前記説示に照らせば、被上告人の本件請求はすべて理由がないとした第一審判決は、
結論において正当であるから、右部分に対する被上告人の控訴を棄却すべきである。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 河合伸一 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)
– 5 –

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